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ブランド認知がなくても負けない「採用力」の高め方 category:コラム update:2022.12.10

こんにちは。志コンサルティングの志村です。

前回の投稿では、「採用がうまくいく会社とうまくいかない会社の違い」として、採用戦略を見つめ直すためのポイントについてお伝えしました。

前回の投稿はこちら▶︎採用がうまくいく会社とうまくいかない会社は、何が違うのか?

こちらの投稿では、「採用を成功させるためには、必ずしも、たくさんの人を集める必要はない」ということをお伝えしました。

しかし、それでも採用担当者の方の中には「とは言っても、結局は就活生に人気の会社や知名度が高い会社じゃないといい人は集まってこない…」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

実際に、合同企業説明会では有名企業や人気企業のブースには就職活動生が溢れかえっているのに対し、自社ブースに人を呼び込むことにも苦戦している…と仰る企業様や、ナビサイトの閲覧数、エントリー数がなかなか上がらない…と悩まれている企業様もいらっしゃいます。

採用市場では、大手企業や資本力がある会社が強いのではないか、というイメージは根強いものがあります。

しかし、企業の持つ「採用力」は、会社の規模や知名度によって全て決まってしまうのでしょうか?

本日は「採用力」という漠然とした言葉を3つの要素に分類し、あなたの会社が採用力を強化するために必要なことを見極めるお手伝いをしていきたいと思います。

企業の「採用力」とは何なのか?

前回の投稿の中で、採用の目的は「自社の未来をつくる人材との出会い」であり、「目指す組織の実現」であるとお伝えしました。
ということは、採用の成功とは、この目的を遂げるために必要な人を会社に迎え、共に働くことと言えます。

私は、上記を踏まえた上で、採用を成功させるために、企業が備えるべき力を「採用力」と定義しています。

前項でも触れたように、この「採用力」を大きく左右するものが「企業の規模や知名度」である、と感じている採用担当者の方は少なくありません。

大手企業や、人気企業ランキングの上位に名を連ねるような企業は採用力が高い(=採用が成功しやすい)、
地方の企業や中小企業など、就職活動生の認知度が低い企業は採用力が低い(=採用がうまくいかない)、というイメージを持っているということです。

確かに、企業のブランド力は採用において大きな効力を発揮します。聞いたこともない企業よりも、誰もが知っている企業の方が、就職活動生はもちろん、そのご家族も安心しやすい、というメリットはありますよね。

しかし、私は採用力は必ずしも企業のブランド力だけで決まるとは考えていません。

私自身、これまで採用のお手伝いをしてきた企業様の中には、就職活動生の認知度は決して高くはないものの、地方で活躍する優良企業様や、決して人気やトレンドとは言えない業界業種の企業様もいらっしゃいます。

それにもかかわらず、どの企業様も、最終的には自社の社風やビジョンにマッチした優秀な人を採用することに成功しており、内定承諾率、採用人数が年々向上し、採用ミスマッチが起こりにくい、採用力の高い企業へと発展されています。

これらの経験から、「採用力」を決める要素は、企業のブランド力だけではない、と言えます。

それでは、「採用力」とは一体何なのでしょうか?
私は、採用力は、「3つの要素」の掛け算である、と定義しています。

その3つの要素とは、こちらです。

採用力=「企業ブランド」×「人事制度」×「採用伝達力」

企業の採用力を高めるために必要な要素として、今回3つの要素を挙げています。
この3つの要素の掛け算によって、企業の採用力が決まるとも言えます。
ここでは3つの要素を一つ一つ具体的に紹介していきます。

1.企業ブランド

採用力が強いのはどんな企業か?と聞かれた際に、多くの方が真っ先にイメージするのが、この「企業ブランド」の高さではないでしょうか?

いわゆる「知名度」や「認知度」に大きく影響するのがこの「企業ブランド」です。
ブランド力の高い企業は、他の企業と差別化ができており、知名度も高く、就職活動生が「ぜひこの会社に入りたい!」と、自ら進んでエントリーし、選考に臨むことも多いため、採用における母集団の形成には非常に有利です。

そのため、TVCMや広告でよく見かけるような企業、老舗の大手企業などは、この「企業ブランド力」が高いと言えます。
一方で、地方企業や広告宣伝等を行っていない中小企業などは、最初はこのブランド力が低いかもしれません。

それでは、企業ブランドを高める方法は、広告やCMなどで露出をする以外にはないのか?というと、そんなことはありません。
どの企業も、その会社に合った求人プロモーションをしっかりと行うことで、採用における企業ブランドを高めることが可能です。

具体的には、下記のような点を見直し、徹底的に取り組むことが重要です。

<求人プロモーションのポイント>

・会社のビジョン、理念の言語化
・求める人物像の明確化
・マーケットの分析
・広告物の選定
・ツールの企画、制作 
 など

2.人事制度

2つ目の要素は「人事制度」です。
「人事制度」というと、入社後に関わってくるものであり、採用には無関係なのではないか?と思われるかもしれませんが、実は採用にも非常に大きな影響を及ぼすものでもあります。

というのも、もしもあなたが求職者、就職活動生の立場だったとしたら…という視点で考えてみていただきたいのです。
数ある求人を眺めながら、どの企業にエントリーしようか?説明会に行ってみようか?と考える際に、決め手になるのは、会社の知名度や事業内容だけでしょうか?

実際には、

 「この会社に入ったら、どんなキャリアパスがあるのかな?」
 「入社後の待遇ってどうなんだろう?」
 「どんな社内制度があって、社員の皆さんはどう活用しているのかな?」

こんなことを考えながら企業を選びませんか?

就職活動生にとっても「内定をもらうことがゴール」ではありません。これから先、長い社会人生活を過ごすことになる会社に対し、入社後にはどのような待遇があり、働くことでどのようなキャリアステップを歩むことができるのか…ということは、非常に重要な決め手になります。

つまり、「人事制度」は、採用段階においても、自社に興味関心を持ってもらうことができるアピールポイントにもつながるのです。

だからこそ、採用力を高める要素の一つとして、採用プロセスのなかに、入社後のイメージやキャリアパスをしっかりと伝える機会を盛り込むようにしっかりと設計することをお勧めします。

<採用プロセス設計のポイント>

・選考フローの作成
・選考のコンテンツ設計
・動機付け要因の明確化
・入社後のイメージの伝達
・働きたいと思える制度づくり、PR

3.採用伝達力

3つ目にご紹介する要素は「採用伝達力」です。
実は、私自身が最も重要だと考えているのがこの「採用伝達力」なのです。

なぜなら、これまで紹介してきた3つの要素のうち、この「採用伝達力」が最も高めやすい要素だからです。

そんな「採用伝達力」とは一体なんなのか?を説明していきます。

伝達力とは、文字通り「伝える力」です。
採用においては、「自分たちの会社の魅力や特徴、理念やビジョンを、就職活動生に伝え、自社に興味を持ってもらうこと」が非常に重要です。
就職活動生に「この会社で働きたい!」「この人たちと一緒に働いてみたい!」と思ってもらえるように、届けるべき情報を届け、伝えるべきことを明確に伝える力を「採用伝達力」と呼んでいます。

求人原稿に何を掲載するか、ということにおいても伝達力が求められますが、特にインパクトが大きいのが、企業説明会や面接など、対面で就職活動生と接する機会での伝え方です。

30分、1時間といった決められた時間の中で、何を話すか?どう伝えるか?

実際に、就職活動生に話を伺うと、

「就活をするまでは名前も知らない会社だったけれど、実際に選考の中で関わってくれた人事担当や先輩社員の話に感銘を受けて、入社を決めました」
「社長メッセージで、会社の理念やビジョンを聞いて、ここで働いてみたい!と強く思いました」

という風に、会社の知名度や待遇よりも、最終的には社員の雰囲気や社長のメッセージが内定承諾の決め手になった、という人は決して少なくありません。

このような企業は、就職活動生と接する機会を、ただの説明会、ただの選考、と捉えているのではなく「出会ってくれた人に、限られた時間の中で、どのような価値を提供できるか?」というスタンスで話をしていることが伺えます。そのスタンスが就職活動生に伝わっているんですね。

だからこそ、もし今、採用があまりうまくいっていない…と感じている人事担当の方がいらっしゃいましたら、「説明会や選考で何をどのように伝えているか」ということを今すぐに見直してみることをお勧めします。

そして、ぜひ採用に関わる方の伝達力の育成に取り組んでみていただきたいのです。

<採用に関わる人の育成のポイント>

・人事、リクルーターの育成
・採用チームの情報共有
・求職者とのコミュニケーション
・伝える力の強化

採用力を高めて、内定承諾率10%→100%へ成長した企業の話

ここまで、採用力を3つの要素に分解し、それぞれのポイントについてお話ししてきました。

採用を成功に導く採用力は、「企業ブランド」「人事制度」「採用伝達力」の掛け算であり、それぞれの要素の現在時点での強み、弱みは企業によって異なります。
だからこそ、採用力を高めるためには、自分たちの会社がどの要素をどのように高めていくか、しっかりと設計することが重要となります。

その上で、「どの要素を高めたら良いか」をあえてお伝えするとしたら、私は、どの企業においても、「採用伝達力」を高めることから着手することをお勧めします。

なぜなら、「採用伝達力」については、何をどう伝えるかを変えることは今からでも取り組むことができるからです。
それに比べ、「企業ブランド」と「人事制度」は、今すぐに大きく変革することが容易ではありませんし、時間をかけて育んでいく必要があります。

だからこそ、まずは「採用伝達力」を高め、自社の未来をともに創る仲間を採用することを通じて、徐々に「企業ブランド」や「人事制度」を高めていく…という取り組み方で、ゆくゆくは3つの要素を全てを高めていく、という方法を取るのも良いと思います。

とはいえ、まだまだ「伝達力って、そんなに採用に大きな影響があるの?」と思われる採用担当の方もいらっしゃるかと思います。

ここで1つ、私自身がお手伝いさせていただいた企業様(ここではA社とさせていただきます)の事例をご紹介したいと思います。

A社は、ドライバーを中途採用したいという企業様でした。
人手不足で、何としてもドライバーを増やしたい…でも、実際には10名に内定を出しても9名に辞退されてしまい、なかなか採用がうまくいかない…という状況でした。

社長から当時の採用プロセスについて話を伺うと、これまでは人事面接と社長面接しか行っていなかったというのです。
中途採用の採用プロセスとしてはよくある形ではありますよね。

お話を伺いながら、私は、採用がうまくいかない一つの要因として「仕事のイメージややりがいが求職者に伝わっていないのではないか」と感じました。

そこで、このような提案をしてみました。

・中途採用だけれども、あえて「会社説明会」を実施すること
・説明会で、現場で働くドライバーの方に直接仕事について話をしてもらうこと

実際に、会社説明会では、お二人のドライバーの方に出ていただき、求職者の前で話をしてもらいました。
ドライバーという仕事柄、普段、人前に出て話す機会のほとんどない方々でしたので、当日は非常に緊張されていました。
顔を真っ赤にしながら、それでも「私たちの仕事はこういう仕事なんです」「こういうことがやりがいなんです」ということを一生懸命に語ってくださったんですね。

この後、最終的に4名の方に内定を出し、なんと4名全員が入社を承諾してくださいました。
10人中9人が内定辞退していた求人とは思えない、大きな変化ですよね。

これがまさに、「採用伝達力」が採用を大きく成長させた一つの例です。

実際に、「企業ブランド」が急激に変化したわけでも、「人事制度」を大きく見直したわけでもありません。
工夫したのは「誰が何をどのように伝えるか」という点だけです。

この会社のこれまでの採用の課題として、ドライバーという仕事の実際の様子が、求人や面接だけではなかなかイメージが湧きづらかった、ということが挙げられます。
そこで、実際に現場で働く人の生の声を届けることで、「こういう人が働いているんだ」「実際にはこんな働き方なんだ」と、求職者がリアルなイメージを持つことができ、安心して入社を決断できたのではないかと考えられます。

もちろん、これはあくまでも一つの例であり、実際には、様々な業界・業種・職種がありますので、「説明会を開催し、現場の社員が話をする」という方法が必ずしもマッチするかどうかは、ご自身の会社の求人に照らし合わせて検討する必要があります。

しかし、このように採用プロセスを見直し、「誰が何をどのように伝えるか」を工夫するだけでも、あなたの会社の採用が劇的に変化する可能性は大いにあります。
ぜひ、あなたの会社の雰囲気や実際に働く人の様子など、就職活動生・求職者がリアルに知りたいであろうことを、採用プロセスの中でしっかりと伝え、「この会社で働きたい!」という動機付けを促すことに取り組んでみていただけたらと思います。

採用伝達力をもっと高めたい!という採用担当の方へ

また、「採用伝達力」を高めるポイントにつきましては、過去の記事の中で詳しく触れていますので、こちらも参考にしていただけたらと思います。