人事戦略 組織開発の専門家 志村智彦 志コンサルティング株式会社

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採用がうまくいく会社とうまくいかない会社は、何が違うのか? category:コラム update:2022.11.16

こんにちは。志コンサルティングの志村です。

2022年も残すところあと2ヶ月を切りましたね。
先月の頭には、2023年卒入社の方々の内定式を行われた企業様も多いかと思います。

それと同時に、採用シーズンとしては、すでに2024年卒採用の準備がスタートしているタイミングでもあります。

あなたの会社では、2024年卒採用はどのように進めて行く予定でしょうか?

もし、「2023年と同じように進める予定」とお考えであれば…本格的な採用シーズンの前に、ぜひやっていただきたいことがあります。

それは「自社の採用活動の振り返りと見直し」です。

まず、「2023年卒採用がうまくいった、希望した人材を採用できた」という企業様は、次のような点を整理した上で、説明会や選考の準備を行っていただくのがオススメです。

  • なぜ採用活動がうまくいったのか?
  • 次年度に生かせそうな点はどこか?
  • さらに良くするためにできることはあるか?

これらは、採用の成功に「再現性」を持たせるためには欠かせないポイントになります。

そして、
「2023年卒採用が思うようにうまくいかなかった、希望するような人材が採用できなかった…」という企業様もいらっしゃるのではないでしょうか?

今回の記事は、このような企業の人事担当者様に、特にお伝えしたい内容となっています。


自社の採用活動を成功させるために最も必要なことは?

私自身、これまで100社以上の人事・採用担当者の支援に携わってきました。

組織を拡大するために人員を増やしたい、という企業様もいらっしゃれば、
先代から事業を引き継いだばかりで、これから新しく組織を変革していきたいという経営者様もいらっしゃいました。

これから本格的に採用活動を行なっていきたい、という企業様のお話を伺っていると、
多くの企業様が、採用を成功させるために最も重要なこととして、「より多くの人を集めなければならない」と考えていらっしゃることに

その根本にあるのは、

「採用を成功させるためには、たくさんの人を集めて、良い人材を厳選して内定を出す必要がある」

という考えです。

だからこそ、

 ・いかにエントリー数を集めるか
 ・いかに説明会の参加者を増やすか
 ・いかに多くの人に選考に残ってもらうか

ということに重点を置いた採用活動を行なっている、もしくは行おうとしている企業様が非常に多くいらっしゃいます。


このような考え方が広がっている要因の一つが「ナビサイトの普及」の影響と考えられます。

リクナビやマイナビといった大手ナビサイトを活用しているという企業様も多いかと思います。
これらのナビサイトが普及したことによって、全国の就職活動生に会社を知ってもらうことができ、エントリーを集めることができるようになりました。

多くの人を集めることができるようになった結果、多数の候補者の中から自社に合った優秀な人材を厳選して内定を出す…という採用活動が一般化していきました。

しかし、このような採用活動を行なっていくと大きな課題に直面していきます。

それは「採用コストが膨れ上がる」ということです。

”たくさんの人を集める”採用の限界

「新卒採用にチャレンジしたいけれど、なかなか一歩踏み出せない」という企業様のお話を伺うと、その理由として「採用コストがかかる」という声が多く上がります。

実際のところ、ナビサイトに求人を掲載して採用活動を行うだけであれば、そこまでのコストはかかりません。
それでは何故「採用コストがかかる」と感じてしまうのでしょうか?

それこそが、多くの企業様が抱いている

「採用を成功させるためには、たくさんの人を集めて、良い人材を厳選して内定を出す必要がある」

という考え方に原因があります。

たくさんの人にエントリーしてもらうためには、まずは、たくさんの人に興味を持ってもらわないといけません。
そして、そのためには、そもそも自社の求人をより多くの人の目に触れさせなければならないわけです。

2022年10月現在、マイナビに掲載されている「エントリー募集中企業数」だけを見ても、18,000社以上が掲載されています。

この多数の企業の中から、自社を見つけてもらい、エントリーしてもらい、説明会まで足を運んでもらう…ということは、簡単なことではない、と言えます。だからこそ、採用担当者の方は「もっと広告費をかけないと求職者の興味をひくことはできないのではないか」と感じてしまうのです。

また、採用にかかるコストは広告費だけではありません。

たくさんの人を集めるとなった場合、説明会や選考の回数も当然多くなっていきます。
そうすると、採用に関わる社員の人件費も当然膨れ上がっていきます。

このように、たくさんの人を集めるための採用には多くのコストが掛かる、と懸念する採用担当者の方は非常に多くいらっしゃいます。

さらに、このようなコストをかけた結果、たくさんの就職活動生に会えたとしても、もしも「希望するような良い人材に出会えなかった…」もしくは、「内定を出したけれど辞退されてしまった…」ということが起こったとしたら、いかがでしょうか?

もうお気づきかと思いますが、「たくさんの人を集めること」=「採用活動の成功」とは言えません。

採用の目的は「自社の未来をつくる人材との出会い」であり、「目指す組織の実現」です。
どれだけたくさんのエントリーを集めるか、どれだけたくさんの人を選考するか、は必ずしも重要ではないんですね。


自社の採用を成功に導くポイント

それでは、自社の採用を成功させるために最も大切なこととは、一体なんでしょうか?

それは、「<採用すべき人>を明確にする」ことです。

闇雲にたくさんの人を集めるのではなく、自社が求める人物像に当てはまる人を集めるために採用企画を練ること。
そして、採用すべき人が「この会社で働きたい!」と思ってもらえるような動機付けを行うこと。

これが、あなたの会社の採用を成功に導くために最も大切なことです。

このように記してみると非常にシンプルであり、「そんなことは当たり前だ」と思われるかもしれません。

しかし、「エントリー数」や「説明会参加人数」「選考人数」「内定者数」といった数字を追い求めた結果、「思うように人が採用できない」という企業様や、「採用はできたけれど期待する人材に育成できない」という企業様の悩みは毎年尽きることはありません。

もしあなたの会社がこのような課題を抱えていらっしゃる場合は、ぜひ次の2点を振り返り、採用企画の見直しを行うことをお勧めします。

1.求める人物像が明確になっているか

そもそも「求める人物像」とは?

よく挙げられるのが「コミュニケーション能力が高い人」「主体性があり行動力がある人」といった人物像ですが、これでは非常に漠然としており、多くの人が当てはまる要素のため、「採用すべき人」を明確にした人物像とは言い難いです。

求める人物像を明確にする上で非常に重要となってくるのが「会社の価値観に合うかどうか」というポイントです。
どんなに能力が高く優秀な人物であっても、会社の理念、価値観に合わなかったり、会社が目指すビジョンや将来性に合致しない場合は、ミスマッチ採用となってしまい、長く一緒に働いてもらうことは難しいためです。

逆に、会社の価値観と求職者自身の価値観がマッチし、会社が目指す方向性に共感をしてもらえた場合、入社後も長く一緒に働いてくれるでしょう。

会社の価値観に合う人物とは、具体的にどのような人物なのか?
それを明確にするためには、まずそもそも「自分たちの会社が大切にしたい理念・価値観とはなんなのか」「会社が目指すビジョンはなんなのか」ということを採用担当者がしっかりと把握していることが必要不可欠です。

自分たちの会社の理念・価値観・ビジョンに共感してくれるのは、どういう人物なのか。
その人に、「この会社で一緒に働きたい」と思ってもらえるには何が必要なのか。

インターンシップ、求人、説明会、選考…全ての採用プロセスを、この「求める人物像」を念頭に置いて企画、実行していくことが、闇雲にエントリー数や選考数を稼ぐ必要なく、欲しい人材を的確に採用することに繋がっていきます。

2.求める人物が「動機付け」される仕組みができているか

求める人物像が明確になり、それにマッチした候補者が説明会、選考に参加してくれるようになったとします。

次に重要になってくるのが「採用したい人物に、この会社で一緒に働きたいと思ってもらうこと」です。
企業側がどんなに「この人と一緒に働きたい!」と思って内定を出したとしても、最終的には求職者側に「この会社で働きたいな」と思ってもらえなかったら、内定承諾、入社には至りません。

もし仮に、「とにかくたくさんの人に内定を出し、ほとんどの人に内定辞退をされても構わない」…という採用方針であれば、この「会社への動機付け」はさほど重要ではないかもしれません。

しかし、「会社にマッチした人を採用したい、入社してもらいたい」と考えるのであれば、求職者を動機付けするための仕組みを採用プロセスの中に盛り込んでおくことは非常に重要です。

それでは、求職者を動機付けするためには具体的に何を行えばよいでしょうか?

まずは、説明会や面接を通じて、社風や価値観に触れてもらうこと。
先輩社員の話を聞いたり交流する機会を設けたり、単なる会社の説明だけではなく、経営者の思いや理念に触れられるような接点を作ることです。
求職者にとって、「一緒に働くのはどんな人たちなのか」「どういうやりがいがあるのか」ということは入社の決め手になります。

求職者の心を掴む会社説明会の作り方については、過去の記事でも詳細をお伝えしていますので、参考にしていただけたらと思います。

<参考記事>学生を魅了する採用説明会での効果的な話し方/人事は説明会で「説明」をしてはいけない?!

新卒採用の場合には、会社説明会や面接だけでなく、インターンシップなど、動機付けの機会はたくさんあります。

しかし、中途採用の場合には、採用プロセスが異なるケースが多く、動機付けの機会が限られてしまうのが現状です。
加えて、求職者側も、「労働条件」や「待遇」「職種」といった点を重視する傾向が強く、会社の価値観に合うかどうかという点は後回しになりがちでもあります。

そのため、中途採用の場合には特に、求職者側にも”自分はこの会社に合うか”見極めをしてもらえるような情報提供を行う必要がありますし、採用担当者側も「会社の価値観に合うかどうか」という軸に沿った選考をより意識して行うことが求められます。

自社に合った人材をなかなか採用できない…とお困りの企業様は、ぜひこの点を踏まえ、採用プロセスや選考内容を見直してみていただけたらと思います。

成功する採用は○に似ている

ここまで、自社の採用を成功に導くためのポイントや見直すべき点についてお話をしてきました。

まとめると、下記のような点が挙げられます。

  • どんな人を採用するか、求める人物像が明確である
  • 求める人物に対して広報PRができている(適切な情報を開示し、興味付けができている)
  • 説明会や選考を通じて「この会社で一緒に働きたい」という動機付けができている
  • 自社に合うかどうか、を軸に選考を行なっている

従来の「たくさんの人を集め、たくさんの人の中から候補者を厳選する」という採用は、「企業側が人を選ぶ」という側面が非常に強い採用活動だったと思われます。

しかし、成功する採用は「企業も求職者も、お互いを知った上で、共に歩むことを決める」というプロセスを経ていくものです。
このように考えると、採用は「恋愛」に近いかもしれませんね。

デートを重ねたり何気ない雑談の中で、お互いの価値観や理想の生活などをすり合わせていくうちに、「もっと一緒にいたいな」「一緒にいろんなことを体験して行きたいな」と感じてお付き合いが始まる…といった感じでしょうか。

採用も全く同じです。

企業側が一方的に「こういう人が欲しい、欲しくない」という判断をするのではなく、求職者が何を求めているのかを知り、提供することが大切です。

企業側、求職者側の価値観や理念がマッチし、共に会社の未来のビジョンに向けて歩んでいこうと合意形成ができる、そんな採用を目指して活動していただけたらと思います。